彼の犯行動機を知りたい…
○MYベストシーン
永山は愛の求め方を知らなかった。
短い人生の中で、彼に注がれた愛情はあまりに乏しかった。
○日本を震撼させた連続射殺事件の真実
連続射殺事件の犯人、永山則夫。
高度経済成長期の過酷な時代で生きてきた少年による、
100時間を越える独白テープをまとめたのが本書。
貧困が生み出した悲劇
この一文で語られてきた事件の真意に迫った一冊だ。
僕がこの事件を知ったのは一冊の本からだ。
君に友だちはいらないで少し本書を参照したと紹介されていたのだ。
そこから過酷な高度経済成長期の実態に関心を持ち、
実際に本書を手にとってみたわけである(σ゚∀゚)σ
○深まる悩みを解決するには彼はあまりに無知だった
永山の生い立ちについてはウィキ任せにするが、
生まれた時期から不幸だったとしか言えない…
永山の長男、長女が幼少期だった頃の一家は円満な様子だった。
しかし、戦場から帰還した父親は行動が変わってしまい、
戦争から終戦という大きな変化の波で一家の歯車が大きく変わっていく…
永山が生まれた頃には家庭は冷え切り、
法律がなければ則夫はおろしていたと母親は語る。
母親からの愛情を受けず、幼い頃から誰にも甘えられなかったという点は、
永山の人生を大きく狂わせた要素であったとしか言いようがない…
○唯一の存在が壊れ、穢されていく光景に
母親代わりに子育てを引き受けたのが長女であった。
しかし永山が四歳ほどの頃に長女も家庭環境から壊れてしまう。
母親代わりで唯一心を許す姉がいなくなった幼少期。
さらに母親が出て行き、兄の暴力に耐える地獄の時期。
小学校高学の頃に長女は一度返ってきたものの、
精神的におかしくなった姉の様子を兄達から聞かされ、
キチガイ=優しかった姉と刷り込まれてしまっていたことに、
なんとも言えない悲しさを感じてしまう。
バカって言われる度に、姉さんのことを考えちゃうんだ。
自分を唯一大切にしてくれた人への不潔感、侮蔑感、失望感などから、
永山が抑鬱状態になってしまうのに納得してしまう…
○暴力で繋がる依存欲求
母に置いてかれた永山は次男から暴行を受ける毎日だったようだ。
しかし母、他の兄達から無視され続けた永山にとっては、
殴られながらも次男と肌を接していることに依存欲求を満たしていた…
幼少期から誰にも甘えられない環境で育ったからこそ芽生えた、
接触がないよりマシという感情には絶句。
人間にとって無視されることは辛い。
しかし、無視されるよりも殴られることの方がましだと、
無視が一番辛いと感じてしまうものなのだろうか…
○真面目で一生懸命すぎる青年期
中学卒業後の永山の行動パターンは同じ。
最初は必死にやるものの疲れ果てる。
そして他者に迷惑をかけそうになると逃げさる
不幸な環境から前科持ちとして保護観察の目などに敏感だった永山。
前科持ちが知られたらすべて捨て去り逃げ出す。
そんな行動で行き着くのは地獄のような環境
過去の過ちと他者の目に敏感すぎた永山。
そして一人でなんとかやり直そうとするが、
やり直せない完全な負のスパイラルにはまる…
困ったら仲間に相談である(`・ω・´)
ひぐらしのメインテーマだ!
永山にそういう人物がいなかったのが悲劇の始まりだ…
○武器を得て強くなった気
今までずっと苛められてきたでしょう、
だからやっと巡り会えたっていう気持ちなんだ。
事件を起こした銃をたまたま入手したときの永山の気持ち。
かって木刀で妹を殴りつけた気持ちを思い出し、
拳銃は自分を強くなったかのような錯覚をさせる…
しかし他人に歯向かえないという永山の基礎的部分との均衡がとれなかった。
この臆病な感情と強くなった錯覚から事件が発生してしまった…
第一の事件からそう感じてしまいます。
元から猜疑心が強い少年だったしね…
○総評
Aランク
永山という殺人犯の人生が濃密に圧縮された一冊。
人は環境(運)で殺人を起こしうると思わせてくれる。
貧困や暴力が原因で殺人を起こすのならば、街には殺人犯だらけである。
同じ過酷な環境でも頑張っている人はいるし、成功している人もいる。
正論っぽいが、同じ過酷な環境などあり得ない。
永山の生い立ちを知り、
簡単に「過酷な環境」だと括ることはできないと思わざるを得なかった。
殺人犯に関する本は初めてであったが、考えさせられることが多く、
新たな分野として関心を広げてもらえた一冊でした。
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